独りの戯言


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カテゴリ:思い出( 9 )

地獄の特訓

首の周りに「ねばい汗」をかいて目が覚めた。まだ0時半だ。何時もの就眠儀式を省いて寝たら、ぐっすりと3時間程寝た。普段ベットの中で目をつむる時間だ。目が覚める直前に、夢を見ていた。もう40年近く前になるだろうか、会社でそろそろ部下を持つ年齢になった社員に「通過儀礼」のような研修があった。郊外のスポーツ施設に一週間缶詰になって、泊まり込みの研修を受けた。私は覚めているつもりだったが、今になってもまだ覚えているのは、やはり「マインドコントロール」だったんだろうな。

睡眠を奪い、大声を出させて思考力を奪い、部屋単位の団体責任で縛ると、容易に人間の心は違う所に行ってしまう。アメリカの軍隊の訓練風景は、ドラマや映画で随所に見られが、身体を使って大声を出させ極限まで追い込むと、興味の方向が縛られ、死ぬことまで恐ろしくなくなるのかも知れない。ともかくそんな研修が流行った時期がある。同じグループで一日20時間程寝食を共にし、一週間も過ごすと何となく「人間」がむき出しになる。狡いか素直か、真面目不真面目などはすぐ分かる。まあ私も見られていた訳だが。

そんなことがあったな、と思い出した。この研修には色々と「後日談」があるが、ごくローカルな話題になるので細かくは書けない。ともかく一週間ぐらいは多かれ少なかれ影響は残った。朝礼でいきなり大きな声で話し出す人がいると、(あいつ、まだ残ってるよ)と夜のお酒の話題の一つになった。毎年同じ時期に繰り返されたが、私が転勤になって以降のことは知らない。

「効果はあったのかな」と考えると、あまりない。人間の根性はそう簡単に思い通りにはならない。ただ、「一日数時間の睡眠でも、一週間は大丈夫」という変な自信は、後日役に立った。

変な時代だったな。

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by zoofox | 2018-11-15 01:39 | 思い出 | Comments(0)

樺(かんば)先生

樺先生の最後の講義は、何時もと違う教室だった。大きな教室一杯に学生以外の人も集まっていた、と記憶している。安保反対のデモで娘さんをなくしたことは、授業では一度も発言されたことはない。もう、この講義の内容も定かな記憶ではない。私はかなり前の列にいた。記憶に残っているのは、最後の講義で少し娘さんのことに触れたことと、一番最初の講義で、「私はリベラリストです」とおっしゃったことだ。

この「リベラリズムを信奉するもの」という意味が難しい。「自由主義」で「民主主義」の名前を持つ「自由民主党」は、本来ならリベラリズムの実現者であるはずだ。今の党員はそんな意味も知らないだろう。

「じゃあ何がリベラリズムなんだ」と問われても、耳触りが良い言葉だけに、いろいろな場面で使われ、私には簡単に定義できない。今では前向きにも後ろ向きにも使われる。自由主義社会を「国家の統制に対し、個人が自由に判断し実行する権利を有する」と理解したら、世の中「野放し放牧状態の自由」になってしまう。歴史的にはいろいろな説がある。著書も多い。

簡単に聞いて納得する言葉は多いが、理解して納得することは難しい。だから私には使えない。何か拠り所のない夜、ふっと思い出す。

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by zoofox | 2018-09-21 23:49 | 思い出 | Comments(0)

赤とんぼ

他人の言葉に誘発されて、長いこと忘れていたことを写真のように思い出す。それは大小二回あったと思う。小学生の頃か中学生か高校生かそれも覚えていない。多分秋の初めなのだろう、赤とんぼの大群が西から東に飛んできた。電線に鈴なりに止まり、木も道路も至るところが赤とんぼで埋め尽くされた。学校から家に向かう一本道から、大通りの電線に数え切れない程止まっていた画像の記憶だけがある。

もう一回は、もっと前に小学校の二階の教室から、赤とんぼの大群が飛ぶのを見た。

人間の記憶って、いい加減なようで画像的で、面白いな。私の古い記憶は大体画像で、私を背後から見ているように思い出す。

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by zoofox | 2018-08-29 22:24 | 思い出 | Comments(0)

夏の花

私は初夏に生まれた。夏は好きだが太陽光には弱い。子供の時から色が白くて、海水浴に行くと真っ赤に日焼けして、熱が出る。一週間もして皮が剥けるとまた白い肌に戻る。これは遺伝による体質だから、仕方ない。車の窓枠に肘を出して、ゆっくり精一杯焼いても秋にはまた戻る。これは今でも同じだ。メラニンが少ないか排出が早いのかも知れない。

夏になると、ふいに思い出す言葉がある。「夏の花」と「常磐木(ときわぎ)」が、二つくっついて出て来る。夏の花は原民喜の被爆の本だ。常磐木は梶井基次郎のイメージがあるがはっきりしない。「夏の花」は夾竹桃のイメージがある。夏の暑い最中に原爆の熱い洗礼を受けた。本の内容はほとんど覚えていない。

カフカの変身とか、カミユの異邦人なども同時期に読んだ。何しろ最初に覚えている小説は、小林多喜二の「党生活者」だ。「蟹工船」の後ろにあったと思う。小学校の高学年から中学に掛けては、身近にある本を手当たり次第読んでいた。家族も学校の先生も、「あれは読んでいい、これは駄目だ」など、とひと言も言われた記憶がない。姉が働き出して、日本と世界の全集ものを買ったから、選り取り見取りだった。ドフトエフスキーの「罪と罰」、「カラマーゾフの兄弟」も同時期に読んでいる。今になると何も残っていない。ロマン・ロランの「ジャン・クリストフ」だけは、その後も何度も読んでいる。

もちろん言葉の意味も内容の示すところも理解できるはずがない。「党生活者」を「トウセイカツジャ」と読むのか「トウ・セイカツシャ」と読むのか、本の意味が分かったのは大部大きくなってからだ。読んだときには意味が分からなくても、時間が経って何度も読むうちにだんだん分かってくる。

最近の子供は本を読むか読まないか知らないが、子供が童話好きだと思ったら大きな間違いだ。(こりゃ嘘だ)と子供なりに知っている。「○○(私の名前)、何読んでるんだ。ほーすげえなあ~」と言われても、その先は干渉してこない。塾や習い事もいいが、マンガやTVの他に「読書」も自由にさせるべきだと思う。軽い本より、ビッグネームのとんでもない重い本を、子供は子供なりに読みこなす、第一「漢字を覚える」、私は読めない熟語があると前後を類推して読んだ。辞書を引けるようになるずっと前の話だ。

「常磐木」は何に出てきたのか定かではない。これは学校の教科書にあったと思う。

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by zoofox | 2018-08-12 10:36 | 思い出 | Comments(0)

希望

岸洋子という歌手を御存知だろうか。フォークソングに飽きた頃、菅原洋一と岸洋子の歌を良く歌っていた。

ラジオの深夜番組で「希望」という歌を知った。「♪ 希望という名の あなたを訪ねて、今日も私はまた汽車に乗る ♪」、ラジオで聞いて録音し、ギターで音を拾いコードを付けた。私が初めて聞いたときは4番まで歌詞があった。今、「岸洋子 希望」で検索すると、私の知っている岸洋子さんより随分痩せた姿と、歌詞は3番までしかない楽曲がヒットする。

あれはいつ頃のことだったのだろう。調べればインターネットは即座に答えをくれる。しかし、そんなことを全て明らかにしたくない気持もある。ラジオとソノシートの時代があり、レコードになり、CDに変わる。FM放送のエアチェックはそのどこかから始まっている。気に入った曲に出会うと、歌詞を書き出し、曲をコピーして自分で歌う。後年音符で見ると違っている箇所もある。昨年、カセットテープもVHSの録画済みのテープも山ほど捨てた。レコードとCDは捨てられない。

当時は今ほどずるくないから、「ここは囁くようにセリフのように歌って、だんだん盛り上げて声を張っていく」などというテクニックは使えない。他人に聞かせようと思って歌ってはいなかった。歌うことが好きだったんだな。

今ほど希望のない時代も私の人生の中で少ない。歌自体も「希望を求めていく」という内容だ。「仕事でのし上がっていく」とか「素敵な人と出会う」、「金儲けをしたい」と、そんな希望は今の私にはなくなってしまった。「希望」というものは何時までも追い求めて、手に入らないものなのかも知れない。

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by zoofox | 2018-08-10 09:55 | 思い出 | Comments(1)

森田童子さん

米朝会談のニュースに埋もれて、社会面の片隅に、「森田童子さんが4月末に亡くなっていた」というニュースがあった。私はこの名前を何時も、「リリー」と一緒に思い出す。LPを買ったのが同じ頃だと思う。私は「リリー」のLPを買い、妹は「森田童子」のLPを買った。リリーはしゃがれた声で、森田童子はか細い声で、心に浸みる歌を歌っていた。私はこの人をLPの写真でしか知らない。ステージを見たこともない。奇妙な名前と奇妙な歌がよく合っていた。

私より若い死だ。でもこの人は自分の人生の中で、少数でも他人の心に影響を与えた。私は何をしてきたのだろう。



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by zoofox | 2018-06-13 08:28 | 思い出 | Comments(2)

30になったら私死にます

(毎日、二度も三度もブログを書くのかな)、と自分でも不思議になる。ホームページを書いていた時は時間はもっとゆっくり進んでいた。一週間に何度か更新をして、メールを下さる方と交流する。今は、時間があって、パソコンがあり、言いたいことや気になることがあると躊躇わずに書いてしまう。「書く」というより「ねえ聞いてよ」と話している感覚だ。

サビの部分で、「♪ 30になったら私死にます ♪」という歌があった。年齢は自分の年齢で覚えている。この歌を聴いている時は私は20代だった。(そうか30歳になったら死を考えるのか)特に好きな歌ではないが、「紅い橋」のように陰鬱ではない軽快な歌だったような気がする。

ブログを書いた後、きっとユーチューブで検索するだろう。実際の歌を聴いたら、今持っている印象は消えてしまう。多分同時期に「グリーン・フィールズ」という歌が好きで、録音してハモって録音するという作業をしていた。亡くなったリリーの最初の曲は「お元気ですか」というLPのB面トップの曲を聴いて、レコード屋に走った。誰も知らないよねこんな曲。でも当時の私の心には何か共感するものがあった。

音楽にしても言葉にしても、ひょこっと思い出すと頭を離れない。こんなことが多くなった。

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by zoofox | 2018-05-18 23:07 | 思い出 | Comments(0)

花桃の季節

もう40年も前の話です。JR平井の駅のロータリーで毎月「植木市」があった。父親や母親を乗せて買いに行った。その時沢山の苗木を、「サニークーペ」の屋根に縄で括り付けて買ってきました。父親はせっかちで、庭の空いたところにはどんどん植えてしまう。根付いてから困ることも何回もありました。

玄関脇のブロック塀の内側に、紅白の花桃を一本ずつ植えた。苗木は大きく育ち、電線に届くようになって、強剪定をかけたら、紅い花桃は枯れてしまった。その頃、家の前の道路の街路樹がプラタナスから花桃に替わった。見渡す限り花桃だらけです。この二週間で、豆粒のような花芽が満開になっている。我が家の花桃も精一杯咲いています。朝の光の中で、思わぬ効果ですが、これはカメラのプログラムの技です。
c0366973_08151683.jpg
今、地震がありました。

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by zoofox | 2018-03-30 08:35 | 思い出 | Comments(0)

曇り空の日

朝、シャッターを上げて窓を開け、東に向かってポンポンと柏手を二つ打つ。ずっと父がしてきた習慣だ。5時半だったり、6時過ぎだったり、日によって少しずつ時間は違う。もうお日様の顔を見ることは滅多にない。その時空を見上げる。乾いた何か焦げ臭いような空気の匂いは今はない。まちの匂いが変わってきている。

不思議なものだが自分の体に刻まれた「時計とカレンダー」を知る時間だ。学生の頃から、勉強は朝型である。三時でも四時でも飛び起きて宿題や予習をした。この時間は、庭の犬が騒ぐので朝食前に、新聞紙(当時はレジ袋やテッシュなどはない)を何枚か持って、自転車の荷台に鎖を縛り付け、散歩に連れ出した。中型の雑種だが、力は強かった。犬に合わせて好きなだけ走らせる。時々前輪で前足を引かれて、キャンと鳴いた。でも根性のある犬で自分が満足するまで速度を緩めない。だんだん並足になる。ゆっくり声をかけながら走ると、マーキングと排便の時間だ。人間の言葉が分かるように、彼も要求する時は顔と口の中で何か言う。

当時はまだ「野犬の群れ」がいた。茶色のボクサー種のような犬がリーダーだった。「犬殺し」と呼ばれた野犬の捕獲がそろそろなくなる頃だった。人間は襲わないが、縄に繋がれている犬は襲撃の対象になる。私は自転車に「木刀」を差して用心していたが、この犬が襲われたことはない。襲って負けたのは見ている。弱いくせに鼻っ柱の強い犬だった。盲腸を切って退院してすぐに公園で「予防注射」があった。私の仕事だから連れて行く。1キロ以上の距離を徒歩で歩くだけでも傷に響く。彼は時ならぬ散歩だと思って、喜んで着いてくる。犬は犬の言葉があるらしい。公園が近づくと、足を踏ん張って抵抗する。仕方がないから抱き上げて会場に行く。注射はほんの一瞬だ。

「お手」、「コロリ(指で円を描くと横になって一回りする)」、「待て、よし」、「来い、いいよ」、そんな小さな動作は一度教えるとすぐ覚えた。夏は庭の木の陰に穴を掘って、首だけで母屋の動きを見ていた。彼が事故で死んで以来、私の家では犬を飼わない。犬は愛玩物ではない。人間と同格の心を持った生き物だと思う。今になって「大きな犬を飼いたいな」と思うが、彼を看取る自信はない。あれからもう50年近く経つのか。

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by zoofox | 2016-10-08 09:13 | 思い出 | Comments(0)