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流される

「仕事」が無くなってから仕事が恋しい。仕事をしている時は(何でこんな割に合わないことをしているのかな)と時々感じていた。「人は・・」とか「男は・・」と大上段に仕事を語るわけではない。世の中から「あんた、もう仕事をしなくていいよ」と言われる寂しさだ。自営業とサラリーマンでは感覚が違うと思う。私は「自営業に近い」と思っていたが、やっぱりサラリーマンだ。一時期を除いて、明日の「運転資金」の心配をしたことはない。そんな頃から代替え措置として、家族や近隣の関係やボランティアに精を出す人もいる。自分の生き方に何となく「錘」を付けてそれを糧とする。(みんなそれぞれいい生き方を見つけているな)と思う。私には今何もない。日々の生活に「限界」の気配はない。あるとすれば「何もない」ということがストレスになっている。

私は「仕事人間」ではなかったはずだが、仕事という心張棒を外すと案外脆弱な青春時代のような自分が残る。それだけ仕事に依存していたのだろう。(人間は面倒くさいな)と感じる。周囲からがんじがらめにされている時は、どうにかしてそこから抜け出そうとジタバタする。一つずつそんな「たが」が外れておっぽり出されると、途端に途方に暮れる。自分で望んだことなのに情けないことだ。

そんな状態に気が付いているから、(自分で自分を何とかしよう)と考える。もしかしたらこれがいけないのかな。良い悪いの問題ではない。もっと自由に「流されるまま」という選択をしたことがない。

ふいに思い出す、中学三年生の時、先生たちの新聞に「受験生の気持ち」という文章を書けと何人かが言われた。束縛なしに好きに書けというので、大げさに「私たちは今嵐の中に小舟で海に放り出された。こんな時に導いてくれればそれが悪魔でもいい・・」というようなものを書いたと思う。刷り上がった新聞を手にK先生は、「これはねえ」と声を失っていた。こんな子供がそんなに悩んでいたのかと先生も驚いていた。私は先生のそんな反応を見て驚いた。(他人を自分の尺度で測ってはいけない)と思った。(「楽になれるなら悪魔に魂を売る」なんてことは考えないよ)という軽い気持ちを本気と取られては私も驚く。

当時は学校群で行く学校は決めていた。そこに落ちれば次の群があるだけの話で、特に受験勉強などガリガリとした記憶はない。この頃はもうしっかり「流される準備」はできていた。そのままずっと今まで流されなかった。私の人生は何とも平坦だ。やっと自由になれるというのに、今度はその自由が怖い。もう考えずに流されてもいいんだけれどな。



by zoofox | 2019-05-19 10:03 | 考えること | Comments(0)